Contracting-out Agreement について
前回ニュージーランドの財産分与に関する法律、Property (Relationships) Act (PRA)の概要について解説しました。
前回の投稿はこちらよりご覧いただけます。
https://prestige.law/pra-summary/
PRAの影響を回避する唯一の方法は、Contracting-out agreementを締結することです。
これにより、現在所有する財産(将来における財産を含むことも可能)の所有権と、関係が終了した際どのように財産を分割するかについて、独自のルールを定めることができます。
あなたのパートナーは、あなたにContracting-out agreementを結ぶことを強要することはできません。
Property-sharing/Contracting-out agreementは、あなたとパートナーの関係が、婚姻、シビル・ユニオン、de factoのいずれかに関わらず、また関係が始まる前、関係が継続している間、さらに離別・死別による関係終了後のどの時点においても締結することが可能です(パートナーが死亡した場合は、パートナーの代理人と契約を行うことになります)。
Contracting-out agreement によりPRAで定められているの条項の全てまたは一部を適用除外とすることができます。
Contracting-out agreementが適用となる期間について、自由に設定することが可能です。例えば各パートナーの一生涯有効にすることも出来ますし、一定期間のみに限ることも可能です。パートナーのどちらか一方が死亡した後のみ、または両パートナーの死亡後のみを有効とすることも出来ます。
Contracting-out agreement により、Relationship property(共同財産)から除外する財産、つまり各パートナーが独自に所有するSeparate property(分離財産)を特定し、更に共同財産をどのように分割するかを取り決めることができます。関係が継続した年数や子供がいるかどうかに応じて、異なる取り決めをすることも可能です。
シンプルに、すべての財産を共同財産とせず、それぞれが独自の財産を保有することを定めることもできます。
ただし内容が一方的過ぎる場合には、裁判所の審査の対象となる場合もあります。
相続や税務上の目的から、資産分割に関する取り決めを希望するカップルもいるでしょう。
契約書が有効となるためには、次の点を満たしていなければなりません。
- 契約が書面で作成され、当事者双方による署名がなされていること。
- 署名前にそれぞれの弁護士から独立した法的助言を適切に受けていること(これには時間と費用がかかります)。
- 双方の弁護士が契約の効力とその意味を当事者へそれぞれ説明した旨を宣誓の上、Witness (立会証人)の署名していること。
PRA法規、及び書籍において、Contracting-out agreementsのテンプレートが提示されていますが、これらはすべての人のニーズを充足するものではありません。一見単純に思える問題が実際には複雑であることはよくあります。
多くの場合、早い段階から法的助言を受けることで時間と費用を抑えることができ、また争いを少なくすることもあるでしょう。テンプレートの契約書を使用する場合でも、契約を成立させるには弁護士が当事者が契約内容を理解していることを宣誓の上、署名を行う必要があります。
Contracting-out agreementについて弁護士に相談する際は、事前によく準備することで弁護士との時間を短縮できるでしょう。関連する書類を準備し、すべての所有する不動産と資産(年金や生命保険契約を含む)及び債務が、いつ、誰によって取得されたかをまとめたリストや、財産と債務がこれまでどのように使用されてきたかについてまとめたメモを作成しましょう。
パートナー間で著しい不均衡が生じると認められた場合、裁判所はContracting-out agreementの破棄または変更を命令することができます。これを決定する際、裁判所は以下について検討します。
- 契約書の内容
- 契約書が作成されてからの期間
- 不公平または不合理が契約書作成時から存在していたのか、あるいは状況の変化により生じたの
- 双方が契約により確かなものにしようとしている事
- その他の関連事項
Contracting-out agreementの中で、ふたりの関係が継続している間に築き上げた財産を共有財産とし、各パートナーが関係開始前から所有していた財産及び相続によって得た財産を分離財産としている場合、契約書の有効性が問題となるケースは少ないです。
裁判所は、強要または誤りにより交わされた契約を覆すこともできます。契約を破棄できる理由があると思われる場合は、速やかに法的助言を求めましょう。遅れは致命的な結果をもたらすかもしれません。
参考URL (英語のみ)
New Zealand Law Societyのガイドライン “Dividing Up Relationship Property”
http://www.lawsociety.org.nz/news-and-communications/guides-to-the-law/dividing-up-relationship-property