財産分与に関する法律、Property (Relationships) Act(PRA)とは
ニュージーランドでは、結婚/シビル・ユニオン/事実婚の関係にある者同士が、離別または死別した場合、Property (Relationships) Act(PRA)という法律の影響を受けます。
これから数回に分けてこのPRAについて解説していきます。
PRAでは通常3年以上関係が継続した場合、そのカップルが保有する財産をRelationship Property (共有財産)とみなしますが、Contracting-out agreement、つまり事前に財産の所有権に関する取り決めを正式な法律文書として残していた場合、PRAは適応されません。
より詳細な説明は、New Zealand Law Societyのガイドライン“Dividing Up Relationship Property”をご覧ください。
http://www.lawsociety.org.nz/__data/assets/pdf_file/0006/69216/Dividing-up-Relationship-Property.pdf
PRAはいつ誰に適用されますか?
PRAは、すべての既婚またはシビル・ユニオンのカップル、およびde facto(事実婚)で3年以上同居しているカップルに自動的に適用されます。離別か死別かは関係ありません。死別の場合、故人の遺書に記載された財産分与の内容を覆す場合もあります。
PRAは、カップル間の子供の利益に供することを考慮の上、関係が終了した時点における共同財産の分割(ほぼ常に平等)を提供することを目的としています。
財産とは何ですか?
PRAでは、財産は大きく分けて2つのカテゴリーに分類されます。
- 有形財産(住宅、車、家具、宝飾品、金銭、家財道具など)
- 無形財産(ビジネスパートナーシップ、漁獲割当、退職年金制度における将来の利益など)
有形/無形財産は、Relationship property (共同財産)およびSeparate property(分離財産)の観点からさらに分類されます。共同財産には家族が住んでいた家や家財道具、分離財産には、遺産、贈答品、およびトラストとして取得した資産などが含まれます。マオリの土地にはいくつかの例外が存在します。
海外の不動産はどうなりますか?
パートナーの一方がニュージーランドを主な居住地としている場合、ニュージーランドの裁判所は家財道具や銀行口座などの動産について命令を出すことができます。またContracting-out agreementを交わし、他の国の法律を自分たちの財産を分割する際に適用させることに同意することもできます。そのような契約は、他の国の法律の形式に準拠する必要があります。
借金はどうなりますか?
資産の分類(Relationship property/Separate property)と同様に、債務もRelationship debts と Personal debtsに分類される場合があります。Relationship debtsに対する責任は共有されますが、Personal debtsは基本的にはそれらを負った個人に責任が帰属します。
関係が終了した時、財産分割はどのように行われますか?
PRAにおいては通常、すべてのRelationship propertyが、関係終了後に均等(50/50)に分割されますが、各パートナーが関係中に協力して築き上げた財産を貢献度に応じた割合で分割する場合もあります。
この場合、金銭的および非金銭的貢献が考慮されます。金銭的貢献には、Relationship propertyの価値の増加などが含まれ、非金銭的な貢献には、子供の世話やパートナーのビジネスへの支援などが含まれます。
また、関係が続いている間にトラストに譲渡された財産が考慮され、裁判所が各パートナーのRelationship propertyの割合を決定する際に影響を与えるケースもあります。
パートナーの一方が不利な結果になる場合はどうなりますか?
離別後にパートナー間で著しい経済的不均衡が生じる場合に、裁判所は、不利な立場にあるパートナーの財産分与の割合を半分以上に決定する場合があります。
これはパートナーの一方が子育てのためにキャリアを犠牲にし、もう一方のパートナーが有給の仕事を続けるなど、役割分担が不利益を生んだと考えられる場合、特に当てはまります。
一般的に裁判所は、各パートナーの将来の収入ではなく、関係が継続していた間に蓄積された財産を元に決定を行います。裁判所は、財産分与の結果が子どもたちに不利益をもたらす場合等、財産分与の時期を延期する権限なども与えられています。
複数のパートナーがいる場合はどうなりますか?
パートナーが新しい関係を開始した場合、または同時に複数の関係が発展している場合、裁判所が裁定を行います。
パートナーが死亡した場合はどうなりますか?
残されたパートナーは、PRAに基づいて共同財産の半分のシェアを請求する、パートナーの遺書の内容を受け入れる、または遺書がない場合にAdministration Actで設定されたシェアを受け取るといういずれかの選択をすることになります。
まずは専門家に相談しましょう
PRAがあなたの状況にどのように影響するかについて疑問がある場合は、専門家の助言を求めましょう。
独立した法的助言を得るために、自分自身であなたの弁護士を選びましょう。パートナーと同じ弁護士に相談する必要はありません。実際問題、パートナーとは違う弁護士から独立した法的助言を受けなければならないケースも存在します。
次回はContracting out agreementについて解説します。
参考URL (英語のみ)
New Zealand Law Societyのガイドライン “Dividing Up Relationship Property”
http://www.lawsociety.org.nz/news-and-communications/guides-to-the-law/dividing-up-relationship-property