ロックダウン中の給与や雇用契約について
先日のブログ記事「ロックダウン中の労働者の権利について」(https://prestige.law/covid-19-employees-right-during-lockdown/)に対して多くのお問い合わせをいただきましたので、その中の質問をいくつか抜粋してご紹介させていただきます。より多くの方の参考になれば幸いです。
下記のリンクも併せてご参照いただければと思います。
リンク1:Covid-19賃金補助制度について
https://workandincome.govt.nz/products/a-z-benefits/covid19-wage-subsidy.html#null
リンク2:Covid-19賃金補助制度、よくある質問と回答
https://workandincome.govt.nz/products/a-z-benefits/employer-questions-and-answers.html
カジュアル契約
Q1 会社からカジュアルスタッフにはロックダウン中給料を払わないと言われました。もし支払い義務があるのなら会社ともう一度話し合いたいので、その情報源を教えて頂けないでしょうか。
A1 雇用主はカジュアル契約の従業員の補助金も申請することが出来ます。
しかし先日のポストにあります通り、補助金申請の有無に関わらず雇用主には雇用契約書に基づいて従業員へ給与を支払う義務があります。
カジュアル契約の方で、お店が通常通り営業していれば例えば週に15時間入っていたであろうスタッフへは15時間分の給与を支払う義務が雇用主の方にはあるということです。
上記のリンク2に以下のように書かれています。
As an employer, can I apply for the wage subsidy on behalf of my casual employee(s)?
雇用主として、カジュアル契約のスタッフの分も補助金を申請できますか?
Yes. You can apply for the wage subsidy for any casual employee(s) that are employed by you at the time you apply and who would have been expected to work during the time you will receive the wage subsidy.
はい、出来ます。カジュアル契約のスタッフで、補助金を受け取る期間、本来であれば働いていたスタッフについても補助金申請が可能です。
How do I assess whether my casual employee(s) qualifies for the full-time or part-time wage subsidy rate?
カジュアルスタッフの給与(勤務時間)をどのように計算すればよいですか?
Casual employees may have variable hours, so to assess their subsidy rate, the employer should average their hours over the last year. If this average is 20 hours or more, they can apply for the full-time rate, and if it’s under 20 hours they can apply for the part-time rate.
カジュアル契約の場合、週当たりの勤務時間が一定でない場合があります。昨年1年間の実績を平均して、週当たりの勤務時間を計算してください。もしも平均20時間以上働いていた場合にはフルタイムのレートで、それ未満の場合はパートタイムのレートで申請してください。
If they have worked for less than a year, the employer should average the hours worked during their total employment period.
カジュアルスタッフの勤続年数が一年未満の場合は、雇用開始からの平均勤務時間に応じて申請してください。
仕事を掛け持ちしている場合
Q2 仕事を2つ掛け持ちしています。両方の雇用主から補助金を給与として支払ってもらえるのでしょうか?
A2 掛け持ちしている会社は両社ともあなたの分の補助金を申請することが出来ます。
上記リンク2に下記の様に書かれています。
I work multiple part-time jobs. Can I get wage subsidy from all of my different employers?
パートタイムで複数の仕事をしています。全ての雇用主から補助金を受け取れますか?
Yes. As an employee who is employed by two or more different businesses, you can receive the wage subsidy from multiple employers, as long as you meet the usual criteria. We cannot pay the same employer more than once for the same employee, and the wage subsidy rate should reflect whether you’re employed part-time or full-time by that employer.
はい、その他の補助金を受ける条件を満たしている場合、2社以上の会社が同じ従業員の補助金を申請することが出来ます。同一の雇用主が同じ従業員の補助金を二度以上申請することは出来ません。実際の勤務実態に沿って、パートタイムまたはフルタイムのレートで申請してください。
追加申請
Q3 雇用主が既に他の従業員の補助金を申請済みの場合、私の分を追加で申請することはできるのでしょうか?
A3 雇用主は、追加の申請を行うことが出来ます。
上記のリンク2に下記の様に書かれています。
Already applied for Wage Subsidy or Leave Payment
既に補助金を申請しました
I already applied for the COVID-19 Wage Subsidy, but only for some of my employees. Can I make another application for my remaining employees?
既に賃金補助金を申請しましたが、一部の従業員については未申請です。まだ申請していない従業員の分も別に申請できますか?
Yes. You can make an additional application for any of your employees whom you haven’t already applied for.
はい、できます。先の申請に含まれていなかった従業員の分も追加で申請を行うことが出来ます。
入国規制でNZへ帰れなくなってしまいました。
Q4 ニュージーランドでフルタイムで働いています。日本へ帰国中に入国規制が始まりニュージーランドへ戻れなくなってしまいました。雇用主は私の分の補助金も申請することが出来るのでしょうか?
A4 残念ながらこのケースでは補助金の申請は難しいと考えられます。
補助金の対象となる従業員には申請時点において「合法的にニュージーランドで働いていること」という条件があります。
ロックダウンで日本へ帰れなくなってしまいました。
Q5 日本へ帰国予定でしたがロックダウンのためNZ国内線に乗ることが出来ず、帰国できなくなりました。雇用主との間の雇用契約は有効なままです(退職届や解雇通知はありません)。雇用主は私の分の補助金を申請してくれるでしょうか?
A5 帰国のフライトがなくなり帰国できなくなったということで、取得するつもりだった年休をキャンセルし働くことが可能であったと考えられます。
現在はロックダウンにより働くことが出来ない状況ですので補助金の対象となります。
フルタイムで働いています。
Q6 フルタイムで働いています。会社は私の分の助成金も申請しており、雇用契約書にもフルタイム、週30時間以上の勤務と明記されています。
しかしながら振り込まれた給与は補助金の金額から通常のTaxを引いた金額以下でした。私は週20時間以上のフルタイムですので最低でも$585.80(税引き前)を受け取れると思っていたのですが違うのでしょうか?
A6 補助金申請の有無に関わらず雇用主は雇用契約書に基づいて従業員へ給与を支払う義務があります。
上記のリンク1に以下のように書かれています。
If you are receiving the COVID-19 Wage Subsidy, you must try your hardest to pay the employee named in your application, at least 80% of their usual wages. If that isn’t possible, you need to pay at least the subsidy rate (ie, full-time or part-time).
この賃金助成金を受け取った雇用主は、通常支払っている給与の少なくとも80%を従業員へ支払うための最大限の努力を行わなければならない。もしもそれが出来ない場合、少なくとも補助金の金額を支払わなければならない。
(通常支払っている給与が補助金額よりも多い場合)
You must retain the employees named in your application for the period of the subsidy.
補助金を受け取っている期間、補助金を申請した従業員の雇用を維持しなければならない。
Q7 最近トライアルを経て正式に採用されましたが正式採用となって数日後にロックダウンのため勤務先がクローズすることになりました。雇用契約書は受け取りましたがまだ署名をしておらず、勤務時間については口頭で週30時間程度と言われたのみです。この場合ロックダウン中に30時間分の給与を支払ってもらえるのでしょうか?
A7 通常「フルタイム」は週30時間以上の勤務となります。今回雇用契約書に正確なフルタイム、パートタイムの別、及び勤務時間の記載がない中で口頭であれ「フルタイムの契約」で合意していた場合、ロックダウン中で働けない期間中、最低週30時間分の給与を受け取ることが出来ると考えられます。
解雇
Q8 現在パートタイムで働いています。ロックダウン後に雇用主から連絡があり、雇用契約書に従って今日付で解雇通知を出し10日間のNotice後、今日から10日後に解雇すると言われました。解雇までの給与は通常の80%、また政府からの補助金はロックダウンが始まってから解雇日までの3週間分のみ支給されるそうです。突然の解雇通知に驚いていますがこれは仕方のないことなのでしょうか?
A8 雇用契約書のRedundancy(解雇)の条項にどのように書かれているかをまずはご確認ください。
労働者はEmployment lawにより守られています。雇用契約書にどのように書かれていたとしても、10日のNoticeでPermanent part timeの従業員を解雇することは出来ません。
雇用主は法律で定められたRedundancyのプロセスを正しく行わなければなりません。
もし実際に10日のNoticeで解雇された場合、不当解雇としてERAへ申し立てを行うことが出来ます。そのような場合は90日以内に申し立てを行います。
Redundancyについてはこちらも併せてご参照ください。
https://www.employment.govt.nz/ending-employment/redundancy/
雇用主は補助金を申請した従業員を少なくとも補助金が支給されている期間(12週間)解雇することは出来ません。補助金は12週間分が一括で振り込まれます。
Q9 カジュアル契約で週3回5時間(週平均15時間)ほど働いていました。ロックダウンによりお店が閉まったので現在は自宅待機となっていますが、雇用主より連絡があり、即時解雇が告げられました。
またカジュアル契約のスタッフには補助金を支払えないと言われました。
これは仕方のないことなのでしょうか?
A9 カジュアルスタッフとして契約していた場合でも、実際の勤務形態がパートタイム(またはフルタイム)であった場合、雇用主はパートタイム(フルタイム)従業員として解雇の手続きを行わなければならない場合があります。この場合、一方的な通知による即日解雇は出来ません。
下記の「雇用形態について」をご参照ください。
https://www.employment.govt.nz/starting-employment/who-is-an-employee/types-of-employee
今回の補助金はカジュアルスタッフも対象となっています。詳細はQ1をご確認ください。
Q10 ロックダウンが始まる前に退職届を提出しており、4月20日が最終勤務(退職)予定日でしたが、ロックダウンのため3月23日までしか働くことが出来ませんでした。オーナーからはあなたの分の補助金は申請することが出来ないので給与も23日分までしか支払えないと言われました。契約通り4月20日までの給与を支払ってもらえないのでしょうか?
A10 雇用主はロックダウンにならなければ勤務していたであろう勤務時間分の給与を全額支払う義務があります。
雇用主が補助金を申請できるか出来ないか(するかしないか)にかかわらず、雇用主には雇用契約書に基づき、またEmployment lawに基づき、従業員へロックダウン下でお店が営業できない状況であっても給与を支払う義務があります。
ロックダウンの間の給与を減額して欲しいと申し出て、従業員が同意した場合にのみ減額が可能となります。
その他
Q11 雇用主は一括で従業員の補助金を政府から受け取っているそうですが、従業員へどのように支払いを行うかについての決まりはあるのでしょうか?雇用主から一括で補助金分の賃金を受け取ることは出来ますか?
A11 雇用主が同意すれば一括で受け取ることも可能であると考えられます。
しかし補助金には12週間分を一括で雇用主へ支払うことで、向こう3か月間の雇用を守る目的があります。ロックダウンが絶対に4週間で終わる保証もなく、またロックダウン後の売り上げが保証されているわけでもありません。このような状況下、補助金を12週間分まとめて助成することで、従業員の解雇を思いとどまる雇用主が少しでも増えるよう、一括で支給されています。
もしも従業員へ12週間分の給与を前払いして、その後そのスタッフが急に働けなくなった場合、雇用主は前払いした給与の返済を求めることが出来るでしょうか?その様なリスクを考えると、ロックダウン下においても通常の給料日に給与を支払う雇用主が多いのではないかと思われます。
Q12 私の雇用主が補助金を申請しているかどうか確認する方法はありますか?
A12 こちらのページから補助金を受け取った会社名を検索することが出来るようになりました。